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いい仕事、いい人生 時間を売るな!
飯塚哲哉 著
祥伝社(2008年5月1日発行)本体価格1400円(税抜き)

半導体ベンチャー経営者が提唱する「時間の使い方」
工場をもたないファブレス型メーカーのザインエレクトロニクス。薄型テレビなどに使われる画像表示制御LSIで、世界トップクラスのシェアをもつ、半導体ベンチャーである。本書は、同社の飯塚哲哉社長が著した経営論であり、東芝での部長職と、起業から現在に至るまでの経験をもとに考えた「時間の使い方」を提唱する1冊である。エレクトロニクス業界やベンチャー企業を取り巻く情勢のなかで成果を出し続ける著者は、「いい働き方、いい仕事こそが、間違いなく人生の基本条件である」と断言する。ジャスダック市場に株式上場を果たし、ベンチャー企業の発掘・支援にも力を入れる飯塚氏の「時間の使い方」とは――。
いま、日本のエレクトロニクス業界は過当競争に陥っている。勝負は常に僅差だ。優れた特許ほど、複数の技術者が同時に出願することが多々あるという。競争の激しい業界だからこそ時間に対するプレッシャーは常にある。著者は、そんなビジネス環境で、仕事を効率的に進めるに、「1R2E3S」の考え方を取り入れている。これは「1人(Resource)が2つの仕事を同時に実行しながら(Executions)3つの企画を考える(Studies)」ということを意味する著者の造語だ。仕事の忙しさには「波」のようなものがある。空いている時間を有意義に使うため、量産化や効率化ではない、「誰にも真似ができない」部分で差別化を図るために「1R2E3S」の考え方を提案する。飯塚氏の「時間の使い方」は、エレクトロニクス業界だけでなく多くのビジネスに取り入れることができるだろう。(2008/5/16)
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私が選んだ後継者
松崎隆司 著
すばる舎(2007年3月28日発行)本体価格1500円(税抜き)

9人の経営者が明かす後継者の“選択と養育”
社長がすべき最後の仕事とは。本書では後継者の「選択と養育」がそれにあたると語る。後継者をいかに選択するか、育てていくかは多くの企業経営者にとって、常に心にかかる課題だ。じっさいに事業承継を経た経営者が、その成功の決め手となったものや苦労話を自ら明らかにすることは少ない。なぜ、口を閉ざすのか――。その理由は「これから経営を担っていく後継者に必要以上の重圧を与えるからである」と本書の著者である、経済ジャーナリストの松崎隆司氏は語る。中小企業や老舗といわれる一族で経営を継承してきた企業では、家族のプライベートな様々な問題が横たわっている。対外的には、親が子に帝王学を与え、親に従って経営者になったようにみえても、実は喧嘩の毎日が展開されているなんてことも往々にしてあるのだ。
ここでは著者による取材によって、9つの企業の事業承継の形態や方法論の概要が、明らかにされている。特徴的なのは、継ぐ側となる、後継者の肉声も掲載、継がせる側の一方的な見解だけでないところだ。事業承継の実情を垣間見ることができる。事例に挙げられたのは、東京で働く後継者候補の息子を地元に回帰させたその父の心情が記された『板通』、さらに先代の急逝を受け、若くして社長に就任することになったケースも掲載している。いま、後継者選びに悩んでいる社長。または、まだまだそれを考える時期ではないという社長。どちらにとっても参考になる一冊である。(2008/5/9)
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ハングリー 日本を明るくするバカ力
中島武 著
講談社(2004年11月22日発行) 本体価格1700円(税抜き)

42歳の再出発、大借金から年商200億円への成功談
紅虎餃子房や万豚記といった中華料理店を中心に、年間40〜50の飲食店や物販店を出店し続ける際コーポレーション。本書は、中島武社長が借金を抱えた42歳での再出発から、年商200億円に至るまでの紆余曲折を綴った。その内容は「ビジネスについての薀蓄はできるだけ避けた」と自らが語るように、飲食業界に足を踏み入れた理由や自身の生き方を大きく変えた人との出会いなどが中心となっている。金融業と不動産業、高級外車販売を3本柱に事業展開してきたが、バブル崩壊とともに約100億円の負債を抱え、会社を清算。借金返済のための資産整理の傍ら、最後の余力で際コーポレーションを設立した著者が未経験の飲食店経営でいかにして成功したのか――。
料理未経験の中島氏がメニューを巡って料理人と激しいバトルを繰り広げ、自ら先頭に立って店の内装を手がける。オリジナルメニューの開発、店舗デザイン用の美術部門を社内に設け、独自のスタイルを確立していくエピソードは、生き残りに賭けた試行錯誤に満ちている。そこにはかつて金融業界に身を置き、「人生はカネによって、いかようにも変わる」ことを目の当たりにしてきた、著者の再起にかける思いが溢れる。アイデアがカネを生むのではなく、カネがカネを生む。それが今の時代と認める一方で、著者は「自分はアイデアがカネを生む快楽を追い続けたい」と語る。自らを「食べることはプロ」と評し、客が満足するものを徹底的に追求する姿勢は、飲食業ならずとも学ぶべきところ大。25兆円という市場規模を誇り、成熟期に入ったといわれるフードビジネスで、ひとり快気炎をあげる同社を支えるのは中島氏その人の飽くなき探究心と行動力なのだろう。書中、氏は起業を目指し、人脈作りに励む学生を「起業家ごっこはやめろ」と喝破する。一読すれば、「成功のモトはエネルギー」とする著者自身のすさまじいエネルギーが伝わってくる。それは、まさに日本を明るくするバカ力だ。(2006/1/25)
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グーグルを超える日 オーケイウェブの挑戦
兼元兼任 著
ソフトバンクパブリッシング(2005年8月4日発行) 本体価格1300円(税抜き)

Q&Aで「世界知識資産」を構築し“超”グーグルを公言
社名であり、情報交換コミュニティサイトの名称でもある「オーケイウェブ」と聞いても、まだまだ、「何のことやら」と思うかたのほうが多いかもしれない。少なくとも、グーグルには及びもつかないほど知名度は低く、ライブドアのように世間を賑わせている存在でもない。しかし、著者である同社の兼元兼任社長は、ことあるごとに「グーグルを超える」と公言し、ついに自著の書名にまでしてしまった。デザイナー出身で、同社を起業する前は公園で寝泊りするなど、ホームレス同様の生活を送ったという兼元社長が作り上げたコミュニティ「オーケイウェブ」とはいかなるものなのか。本書では、その詳細な解説に加え、「グーグルを超える」ことが可能な理由を述べている。
知りたい事柄のキーワードを入力し、キーワードに関わりのあるサイトを機械的に表示するのがグーグル。説明の必要がないほど有名な、一番人気の検索エンジンだ。対してオーケイウェブは、Q&A方式の会員制サイトである。知りたいことをサイト上で質問すると、質問が来たことを知らせるメールが会員に送られる。受け取った会員及び、それをサイトで読んだ人々が回答を寄せる仕組みだ。そこには個々人の、これまで得た経験や知識、物事の見方等が反映されることになり、回答者次第で答えは変わる。質問のカテゴリーは約350と多岐に渡り、日常生活等での相談事も多い。会員数は約37万人、アクセス数は月間1億ページビューにのぼり、質問に対して回答がひとつも寄せられないことは、ほとんどないという。質問と回答のやりとりをまとめた書籍「今週、妻が浮気します」(中央公論新社)はベストセラーとなっているので、聞き覚えのあるかたもいるだろう。役立つ回答をした人には質問者からポイントが送られ、上位者には図書券や記念品を贈呈する。それ以上の報酬はないが、「無償でも質問に答えたい」という回答者は多く、自分の知恵や経験を他人に伝えたいという人間の欲求をうまく活用したシステムと言えそうである。兼元社長は「聞きたいときに誰かが教えてくれるという人間のパワーは、ロボット型の検索エンジンを凌駕する」と語り、知恵や経験を蓄積したデータベース=「世界知識資産」を構築することが、自社の使命なのだと言い切った。本書の中では自分のことを「夢想家」と評しているが、一読すれば、グーグルを超えることを手の届かない夢などとは微塵も思っていないことがわかるだろう。(2005/10/11)
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事例! 中小企業M&A白書
月刊「近代中小企業」編集部 著
中小企業経営研究会(2005年9月1日)本体価格1800円(税抜き)

2005年上半期のM&Aは件数・金額ともに過去最高を更新した。また昨今では、大企業だけでなく、後継者不在の切り札として中小企業でもM&Aの件数が増えている。しかし、マスコミで報道されるM&Aのほとんどは大企業に関する。そこで、月刊「近代中小企業」編集部では、中小企業のM&Aのイメージを掴んでもらおうと、秋季別冊の特別号として、同書を発刊することにした。買い手主導で進められるケースが多い大企業のM&Aと比べると、中小企業のM&Aは、売り手オーナーの意思が成約のポイントとなる。こうした、あまり表には出てこない中小企業のM&Aの現状について、前半部分で解説を、後半部分で事例集50例を掲載。日頃、後継者問題に悩んでいる経営者には、参考になる一冊と言える。主な構成は、1章「M&Aの現状について」、2章「M&Aの進め方〜事業承継編」、3章「M&Aの進め方〜事業再生編」、4章「M&A事例集」、コラム「企業再生M&Aの効果のほどは?」、「コンサルティング会社一覧」、「M&A相談シート」。(2005/8/24)
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勝つためのインターネットPR術
神原弥奈子/堀江貴文著
日経BP社(2005年6月27日) 本体価格1200円(税抜き)

ホームページと社長ブログを「強力なメディア」に育てる方法論
「経営者こそ会社のPRマンになれ!」と本書の中で訴えるのは、ホリエモンこと、ライブドアの堀江貴文社長。「ブログは社長の仕事の一つです」と唱えるのは、ネットPR事業を展開するニューズ・ツー・ユーの神原弥奈子社長。インターネット黎明期からネット事業の第一線を走り続ける両者の共著ともなれば、現在、ネットを使いこなしている自信のある経営者も、未経験だが、これからブログのひとつも書いてやろうと思っている経営者も、どちらにとっても興味深いのではないか。付け加えれば、本書を最も読むべきなのは「ホームページもブログも開設しているが、放ったらかしで、ほとんど更新していない」という経営者である。
大まかに分けると、堀江社長が語る第一部では、「なぜホームページや社長ブログが必要なのか」という理由を述べている。社長ブログを流行らせた張本人とも言える堀江社長は、2000年ごろからブログに注目し始めた。その理由は、ブログが「マスメディアとニッチメディア両方の長所を持っていると感じたから」だ。ブログは個人のためのマイ・メディアだが、読者が多くつけば、マスメディア的な要素も持ち始める。事実、1日30万アクセスに成長した堀江社長のブログ「社長日記」は、今やマスメディアとしての力を発揮していると言えるだろう。加えて、読者が自主的にアクセスするため押しつけ的な要素がなく、残されたコメントやトラックバックを通じて、コミュニケーションを取ることもできる。このように、ブログやホームページは資金をかけずに活用できるメディアなのだから、利用しない手はない――。社長ブログの先駆者の言葉だけあって、説得力に富んでいる。神原社長の第二部では、ホームページのアクセス数を増やすテクニックや、人目を引きつけるブログの作り方など、具体的な方法論が述べられている。トラックバックの活用の仕方や、自社ホームページでニュースリリースを公開することが、いかにSEO(検索エンジン最適化)効果があるのかなど、「客を増やす工夫」が満載だ。「勝つネットPR」を実践するためのヒントが、惜しみなく詰め込まれた1冊。読んでみる価値は、ある。(2005/7/12)
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思考停止企業〜本音のナレッジマネジメント実践ドラマ〜
ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会 著・監修
ダイヤモンド社(2005年4月14日)本体価格1785円(税込)

ドラマ仕立てで実践者だけが知りうるナレッジマネジメントの真実を大公開
リストラなど効率化を重視した経営改革が一段落し、次なる成長へ向け「攻めの経営改革」が求められている。これからマネジメントしていくべき経営資源は、ヒトという労働力だけではなく、その中にある頭脳。つまりナレッジをマネジメント(※)する必要である。監修のジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会(JECS)はジャストシステムのエンタープライズ向け製品を通じて集まった、企業でナレッジマネジメントや業務改革を実践している人々。本書は、JECSの各社担当者の体験をもとに、架空の企業の営業改革をドラマ仕立てで描いている。各章末には、その章で知っておくべき知識や理論がコンパクトに解説されているほか、ナレッジマネジメントを現場で実践する際に湧き出る疑問や課題をQ&A形式で紹介している。まさに現場の者にしか分からない体験談を、あますところなく公開している。
第1章「忍びよる危機−大企業病の本質とは何か?」、第2章「スペックと価格だけではモノは売れない!−守りから攻めの営業改革」、第3章「 組織の壁を乗り越える−意思と知識の共有をどう支援するか」、第4章「成果への確かな歩み−さまざまな抵抗を克服し、仏に魂を入れる」、エピローグ「より大きな成功を目指して」で構成。実体験からアイディアを得ている、ナレッジマネジメント実践における基本的な考え方から、導入のポイント、組織づくり、運営のカギなどを「営業改革」を題材に詳しく紹介。また、「実際に始めるとどんな混乱が起きるのか?」「会社で行う意味はあるか?」などといった疑問に対しても丁寧に解説している。(※)企業経営に関する理論や実践手法で、その源泉は日本的経営ITの融合から生まれたとも言われている。基本的には「企業内に散在している情報や社員一人ひとりの知識や経験、ノウハウやスキルを誰でもが利用できる形にして、組織的に活用できるしくみをつくること。そして、そのしくみを活用することにより、さらに価値の高い知識、新しい価値を持つ知識として業務に活用しよう」という考え方。日本でも既に多くの成功事例が生まれている。(2005/6/22)
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無試験入社、定年なしで世界レベルの「匠」を育てた
松浦元男 著
講談社(2005年4月25日)本体価格1500円(税抜き)

100万分の1グラムの歯車を作った会社の「超・家族的経営」秘話
世界最小にして、いまだ使い道のない「100万分の1グラムの歯車」をつくった樹研工業。精密部品製造の世界では知らぬ者なしの企業であり、本書のタイトル通り、「無試験・先着順採用」の雇用を実施していることでも高名だ。本書は、同社の松浦元男社長が著した経営論であり、社長から社員へ送る感謝状とも言える1冊である。巷に溢れている、さまざまな話題の社長が書き下ろした経営論とまったく異なるのは、半分以上のページを自社社員の仕事ぶりに当てているところだ。すべての社員が素晴らしく甲乙つけることができないと話す著者が、世界最小の歯車を作り出した社員など、特別な仕事を行った社員を称える「ジュケン・ノーヘル賞」。その受賞者3人が、どのように入社してきて、日々、どのような働きぶりをしているのか――。
それらを語る目線は、「社員はオーケストラのメンバー。全員が同じ目標に向かって、響き合い、励まし合う」というモットーをもつ著者らしく、尊敬の念に満ちている。「企業は社員の安心の拠り所」と言い切り、成功報酬も金儲け主義も否定する著者は、「稼ぐが勝ち」とは対極をいく経営者と言ってよいだろう。それでいて、製造業の世界ランキングがあれば、名を連ねてもおかしくないような優秀な社員を数多く抱え、極限の技術を提供する会社として世界的な評価を得ているのである。伝わってくる社内の雰囲気は家族そのもの。タイムカードも出張報告書も社訓もない。履歴書も求めない。社員が60歳を超えてなお活躍するのも、子育てを終えた女性社員が再び戻ってくるのも、他社に目が移り、いったん転職した社員が出戻りを希望しても快く受け入れるのも、すべてが当たり前のことなのだ。世界レベルの技術を身につける若者や、何カ国もの言葉を自在に操る女性社員など、早い者勝ちの入社システムで、これほど優秀な人材が本当に集まるのかと勘ぐってしまうほどだが、そこは「若者には希望がある」と信じ続ける著者の人柄と、人材育成術がなす業なのだろう。
こんな会社があり、こんなに素晴らしい技術を生み出しているという事実を、世はもっと広く知るべきではないのだろうか――。一読後、そんな気持ちにさせられてしまった。
(2005/6/20)
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安くて納得のいく家を建てたい
宮沢俊哉 著
ダイヤモンド社(2005年2月10日)本体価格1400円(税抜き)

15歳から修業をした大工がまとめた、家づくりのポイントが簡潔に分かる一冊
質の高い家をリーズナブルな価格で実現するためのヒントを丁寧に解説している一冊。著者は、15歳で大工修業を始め、住宅建設業界の旧態依然とした、どんぶり勘定に疑問を抱いて、自ら住宅建設会社を設立して、独自の合理的システムを築いてきたアキュラホームの宮沢俊哉社長。予算の範囲内で、どれだけ満足のいく家を建てることができるのか――。これから家を建てようという人の多くが抱く希望であろう。「安くて納得のいく家」を手に入れるために、家造りの具体的な進め方から、住宅業界の仕組みまでを分かりやすく物語形式にまとめている本書は、そんな人々に参考になる内容が豊富に盛り込まれている。
大手メーカー、工務店それぞれの良い点などのほか、地震に強い木造住宅、建築条件付宅地の実態、住宅価格の内訳などが住み手側の視点から詳細に書かれている。また、「子供部屋は居心地が悪い方がいい」「自然素材だけではシックハウスは防げない!?」など、つい読みたくなるテーマも満載。「高品質・低価格の家作り」を追い求め、坪29・8万円で高気密・高断熱の家を建設することで、市場を切り拓いてきた宮沢氏の書籍だけに、説得力がある。買い物だから「安心して任せたい」と思っている気持ちを無視した業者の「売らんがための営業」の実態などが分かり、一生の買い物と言われる家の購入を考えてはいるが、手抜き工事が怖いという不安を抱いている人には大いに参考になるだろう。(2005/6/9)
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ダメな会社ほど社員をコキ使う
宗 文洲著
徳間書店(2005年3月31日)本体価格1300円(税抜き)

「日本の営業はムダだらけ」と説く中国人経営者の提言
著者は、非製造部門の効率改善を目的としたソフト開発を行うソフトブレーン会長、宗文洲氏。成人後に中国から来日し、1992年に同社を創業して以来、日本のビジネススタイルに――とりわけ営業手法に――大きな疑問を抱き続けながら、会社の舵取りをしてきた人物である。「やっぱり変だよ 日本の営業」や「ニッポン型上司が会社を滅ぼす!」などの著書があり、その内容に耳を痛めた日本の経営者が、少なからぬ数、存在する。
本書においても、非効率的な日本の営業スタイルを一刀両断。いまだにはびこる「接待」や「夜討ち朝駆け」タイプの営業を「ダメ会社」の手法とし、組織的で科学的な営業こそが成果を挙げ、社員のやりがいをもたらすと説く。具体的な戦略を立てることなく、「頑張れ!」と部下に発破をかけることしかできない社長、情報交換と称しての顧客との飲み会に精を出すが、曖昧な話に終始するだけの上司など、いかにもありがちな事例が盛り込まれ、サラリーマンが読めば、「いるいる、こんな上司」と気晴らしになる1冊だ。

とはいえ、著者はサラリーマンに溜飲を下げてもらうために、本書を著したのではあるまい。読者対象は会社の経営陣、それも「読むだけじゃなく実行してくださいよ」という思いからだろう。情に訴えることや、商品力よりも人間関係で成果を上げようとする旧来の日本式営業を否定しているとはいえ、血も涙もない合理化主義を推進しているわけではない。顧客満足を考え、「頑張れ!」という精神論に傾斜せず、事実に基づいた戦略を立てるべしということである。

タイトルを読んで恐る恐る手を伸ばし、前書きにある、「社員をコキ使わないと業績を維持できない会社は、間違いなくダメな会社です」という1文を読んで青ざめた経営者がいたとしたら、要注意――と、言えるのかもしれない。(2005/6/1)
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農から見た日本―ある農民作家の遺書
山下惣一著
清流出版(2004年7月22日)、本体価格1500円(税抜き)

農家の怒りと無念さを次世代に伝える遺言にも似た自叙伝
副題には「遺書」とあるが、著者は存命中。佐賀県の唐津市港町で、畑を耕し、稲を刈り、農業の傍ら筆を執る「農民作家」である。
遺書のつもりで書いたという本作は、農家の息子として生まれた69歳になる著者の自叙伝であり、農政によって翻弄されてきた農家たちの、怒りと悲しみの記憶だ。
1970年に打ち出された米の減反政策以降、「農業は過保護だ」「農業を潰せ」と全国に巻き起こった"農民叩き"。「ミカン奨励」を唱えていたにも関わらず、88年にオレンジの輸入自由化が決まった途端、ミカン以外のものを作れと方針転換した農政――。
この半世紀、日本は農業の近代化を推し進め、効率化の追求ばかりを優先させた。そのたびに、農家は苦渋を味わった。農家の視点から日本の成長を見つめ続けてきた著者は、そんな農業の歩みと未来への提言を、余すところなく書き残す。語り口は軽妙だが、行間からは、農政への憤りと諦念が滲んでいる。
現在、農林水産省は「やる気のある農家への優先的な支援」を打ち出しているが、それに対しての著者のコメントはこうだ。「やる気のない農家なんてどこにもいやしねーよ」。
農業の近代化(金を稼ぐための農業)と、それ以前の両方の時代を体験した結果、「私はもう、人様のために農民はやらない」という結論に辿り着いた著者は、現在、自分と家族の分しか作らず、農業で生計を立てることを止めた。半世紀以上、農業に従事してきた男が、このような結論を出してしまうのが日本の農業の実態。本作の最後に、地産地消を入り口とする新しい農業のビジョンが語られていることが、せめてもの救いと言えようか。
日本に生きた、膨大な数の農家たちの無念の思いや叫びが、ページの中から聞こえてくる――。本書は、そんな1冊である。

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