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アニメーション制作現場の
課題解決に取り組む産官のねらい
(2008/07/01)
世界的に高い評価を受けている日本のアニメーション。その市場規模は年々拡大し、2006年には2400億円を突破した。ただ、少子化による需要減などが原因で国内市場の伸びは頭打ちだ。内需を背景に発展してきたアニメーション産業が岐路に立たされている。そんな中、アニメーションの制作における課題を解決し業界の活性化につなげようと行政や民間企業が動いている。
■国内市場の伸びが頭打ち
メディア開発綜研が実施した「アニメーション市場分析プロジェクト」(メディア開発綜研発表・2007年7月)の調査結果によると06年のアニメーション市場規模は2415億円で、04、05年に続き、拡大している。しかし、課題はある。濫造による供給過多や少子化による需要減などが原因で国内市場の伸びが頭打ちなのだ。
経済産業省は08年3月、東京・秋葉原UDXシアターで「アニメーション制作における支援システムと人材育成」と題したシンポジウムを開催。会場にはアニメーション制作会社の経営者や学生など100名以上が詰めかけた。
開会の挨拶には経済産業大臣政務官、山本香苗氏が登壇。今後のアニメーション産業発展のためには「制作予算管理の透明化や国際分業、さまざまな資金調達手法を活用した大規模な予算での作品制作を推進していくことが必要」と話した。
特に、資金調達やグローバル化への対応など取り組むべき課題は多い。国内のアニメーション産業は、転換期にあると言えるだろう。課題を解決し、業界の活性化につなげようと行政や民間企業が動き始めている。

■制作工程管理のフォーマットを整備

経済産業省商務情報政策局から2007年度「標準的アニメ製作プロセスシステム構築事業」を受託し、今回、システム開発を行ったのは、シンク(東京都港区、森祐治社長、03・5405・3771)だ。同社は、ウェブコンテンツ制作、映像プロデュース、ビジネスコンサルティング&投資の3部門で事業展開。アニメーション制作の中核を担う制作会社や新人クリエイターなどに対し、制作に必要な資金調達や経営コンサルティング、企画開発やプロモーションまでをサポートしている。経済産業省商務情報政策局の受託事業として、アニメーション制作工程を管理するためのウェブアプリケーションソフト「Green Light」を設計、前出のシンポジウムで披露した。「Green Lightは、アニメーション制作の中核を担うプロダクション工程の管理に最適な設計としました」
こう話すのはプロデューサーの蝦名祥征氏。

現在、アニメーション作品の多くは、業界内の企業や団体から出資を受ける形で、制作をスタートさせる。制作プロセスや予算管理、契約内容はプロジェクトチームが個別に決めるが、工程管理が不十分であるために、制作期間が延びる、最終的には作品が完成しない、といった問題も生じる場合も多い。こうした業界特有の問題が、外部からの資金調達においてネックとなっているのだ。
「制作会社などへの調査を行ってわかったことですが、アニメーション制作においては、制作のフローやフォーマットは標準化されていますが、制作工程を管理するフォーマットは未整備なのです」(蝦名氏)。そこで経済産業省では、この制作工程管理のフォーマットを業界全体で統一し、システムとして運用することを推し進めているのだ。先のGreen Lightでは、ワークフロー・スケジュール管理、カットレベルでのタスク管理、発注タスクと連動した伝票整理などが行える。同システムは今年上半期から試用期間に入り、システム提供は年末を予定している。今後は会計システムとの連動も進め、さらに国内だけでなく海外企業との協業の際に、プラットフォームとして利用できるように改良する考えだ。

■外部からの資金調達を視野に入れる

アニメーション産業には著作財産権の帰属の問題も指摘されてきた。制作資金は、映画会社やテレビ局が出資し組成した製作委員会が賄うのが主流。製作委員会方式では、出資者に著作財産権が帰するものとされ、自社で出資する体力のある一部の大手スタジオを除けば、作品がヒットしても制作会社には、その収益増は還元されない。それが制作会社のクリエイターのモチベーション低下につながっていたという。制作会社が主体的にビジネスを展開するためには、現在、主流の出資先以外からの資金が必要になる。こうしたコンテンツ制作への投資やビジネス構築に関するアレンジメントを行うのが信託会社のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(以下JDC信託、東京都港区、土井宏文社長、03・3434・5651)だ。
資金力に乏しいコンテンツ制作会社を支援する。これがコンテンツ制作プロジェクトに投融資を行う「TMF3中小企業コンテンツ制作支援ファンド(以下TMF3)」のコンセプトである。同社と中小企業基盤整備機構が共同で出資し、ファンドを組成した。
公募により採択されたプロジェクトに対し、1案件につき予算の75%、1億円を上限に投融資する。ファンドの規模は総額10億円。JDC信託は投資によって制作されたコンテンツの制作工程の管理や販売,マーケティングなどを支援する。
投融資の対象はコンテンツ全般とし、分野は限定していない。公募は年に4回実施。投資額は1案件あたり平均3000万〜4000万円という。実績は、98年に東京マルチメディアファンド(TMF1)、01年に第2東京マルチメディアファンド(TMF2)を組成、過去2回の投資件数は76件、投資金額は約26億円(契約ベース)となった。融資はつなぎ融資を原則とし、運転資金等は対象外。融資期間は1カ月以上〜12カ月まで。融資金利は年利5〜15%だ。JDC信託の投資業務部長、馬場仁氏は話す。「このファンドでは、制作物に関わる著作権等の権利については、原則的に制作者に帰属します。著作権を活用したビジネス展開をしたいと考える制作会社も増えていますし、最近では、企画段階から海外展開を計画して制作するアニメーションも出始めています」

今年で7回目を迎えた世界最大級のアニメーション総合イベント「東京国際アニメフェア2008」(実行委員長、石原新太郎東京都知事)の来場者数は4日間総計で過去最高の12万6622人を記録した。会場には海外からの来場者も多く見受けられた。
シンクの蝦名氏は話す。「今後のアニメーション産業は、企画はハリウッドが担当、制作は日本のクリエイターが行う。このような海外との協業の仕方も新たな展開として考えられます」
海外企業との協業を進める企業がある一方で、旧態依然とした慣習から脱却できずにいる企業は多い。
制作工程を標準化し、外部からの資金調達を円滑にする――。日本のアニメーション産業の将来を左右する課題と言えそうである。


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